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大規模建物の耐震調査、所有者に義務化 国交省方針

2012.11.11

国土交通省は、オフィスビルやマンションなど多くの人が利用する大規模な建物が、大きな地震に耐えられるか調べるよう所有者に義務づける方針だ。大地震で倒壊の危険がある建物には、耐震性能を高める改修や建て替えを求める。調査や改修に必要な費用を国と自治体で補助する。首都直下地震などに備え、震災に強い街づくりを急ぐ。

同省は有識者の意見を聞いたうえで、2013年の通常国会に「耐震改修促進法」の改正案を提出する方向で調整する。15年をめどに耐震調査を義務化する。

対象となる見込みなのは、床面積が5千平方メートル(約1500坪)以上の大規模な建物のほか、幹線道路や震災時の避難路沿いにある建物。 1981年以前の古い耐震基準で建てられたオフィスビルやマンション、学校、病院、デパート、劇場などが対象で、全国で1万~2万棟あるとされる。

調査に応じない建物の所有者には、50万~100万円程度の罰金を科すことも検討している。

建築士らが建物の耐震性能を分析し、点数化する「耐震診断」と呼ばれる調査を義務づける。「大地震の際に倒壊の危険性が低い」から「倒壊の危険性が高い」までの3段階で性能を判定する。

国交省は調査に必要な費用(数百万~1千万円程度)を補助する。耐震調査は15年をめどに義務化するが、13年度から国と自治体が最大で費用のほぼ全額補助できるようにし、所有者に早期の対応を促す。十分な耐震性能がない建物には、改修や建て替えを求め、従わない場合は建物の名称を公表する。大きな建物の耐震改修は数千万円以上かかるとされるが、国交省はその助成も検討している。

古い耐震基準で建てられた大規模な建物は全国に15万棟以上あり、このうち4割が耐震性能の調査を受けていない。国交省は、所有者が耐震性能を客観的に認識していないことが、改修や建て替えを阻む要因になっているとみている。東日本大震災の際には、緊急の輸送道路や避難路の周りの建物が倒れて通行を妨げる例が多発した。人命救助や早期復旧の障害になったという。

政府は、大きな地震に耐えられる大規模な建物や住宅の割合(7~8割程度)を15年までに9割に引き上げる目標を掲げている。国交省は耐震調査の義務化や補助金の支給によって、マンションや商業施設などの所有者に地震に強い建物に改修するよう促す。耐震性能を高め、国内の大規模な建物の質を高める効果もある。

※日本経済新聞 電子版より

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